2015年1月13日火曜日

2014 日本語ラップ年間ベスト•音楽駄話 後編「その他の話」

続いては後編。

MOMENTの近況の話や、アルバム論、韓国と日本のシーンの比較、
今後の日本語ラップシーン等について語ってます。


Today's Moment

Cyder「でも、今日久しぶりにMOMENTに会って思ったのが、『だいぶ呪縛から解き放たれたのかな...』という笑 人間らしさを取り戻しててホッとした」
MOMENT「笑」
Cyder「別にFightclubの動きは好きだったんだけど、大変そうだったから」
afro108「俺は、MOMENTの『仰ってる通り』が怖かったけどね」

Cyder「やっぱり、いろんな、こう、気持ちの浮き沈みがあるんじゃないですか...」
afro108「というより、文鮮明、Joel Osteenと、yanatakeさんを並べてくるのが凄いな、という笑」
MOMENT「そうですかね?笑」
afro108「正論の話やと思うんだけど、その並びが、面白いな〜と思って。そこに俺は狂気を感じんねん笑
Cyder「狂気笑 で、今度のアルバムはどんな感じのトーンになりそうなの?」
MOMENT「トーンはないです。ほんまにバラバラで、統一性なしでやりましょうって」
afro108「へえ。あと、ジャケもめちゃめちゃ可愛かったね」

Cyder「あれは誰にやってもらったの?」
MOMENT「あれは、一応自分で描いたやつを綺麗にしてもらう形で」
afro108「そうなんや」
Cyder「猫のやつだよね」
MOMENT「『自殺』がコンセプトなんですよ
Cyder「結局病んでるね...」
afro108「まあ、メタファーとしてのね笑」
MOMENT「今回は、本当に一貫性なしでやろうという話で。それは、次のアルバムでやるつもり。元々、EPになる予定だったものを、もう少し頑張ってアルバムの形にした、っていう」
Cyder「その、コンセプトものっていうのは、昔飲みながら話した...」
MOMENT「そう。あれは、Kendrickとか、Jinmenusagi君みたいに、ひとつの映画みたいな語り方をするつもりだから、今回のアルバムは、逆にバラバラにしようっていう」
afro108「逆にね。Jinmenusagiのやつは、凄い映画っぽいよね」
Cyder「映画っぽいですね」
MOMENT「彼もそうだし、僕もそうだけど、Kendrick syndromeから抜けられないっていう笑」

afro108「みんな抜けられへんよね。こないだのJ.coleのアルバムもモロそんな感じ」
MOMENT「今回のアルバムは、そういう匂いを出さないようにするのがテーマですね」



What's a "GOOD ALBUM"?

Cyder「でも、どうなんですかね。今、アルバムで聴く人って全然いないわけで」
afro108「そうやね」
Cyder「物凄い減ってる。僕らの音楽好きの後輩とかでも、iTunesで気に入った数曲だけ買う、みたいな」
afro108「多いよね」
Cyder「そういう世代も多い中で、「アルバム通して聴くと...」ってのが、どこまで意味を持つのか?っていう」
afro108「なるほどね」
Cyder「僕も、音楽を聴く時間は、会社帰りの電車の20分とかで。その時にアルバム通しては聞かないし、休日に散歩してる時ぐらいしか通して聞けてない。」
afro108「確かにね。そういう聞き方の人には、一曲が凄い売れたほうが、アピールできるよね」
Cyder「『良いシングルがいっぱい入ってるアルバム』と、『良いアルバム』。そこらへんの違いって、今日の話にもつながってくると思うんですけど」
MOMENT「僕も、DJ SOULJAHのアルバムも、Jinmenusagi君と、SALUのやつだけ買いました」

afro108「そうやなー。スターいっぱいだけど、DJ SOULJAHのアルバムに俺が触手伸びないのは、俺がアルバム幻想を抱いてるからかな。あのアルバムも、曲として、一個一個すごい好きだし。KOHHとMARIAのやつとかもヤバいんだけど。アルバムとして意味がなさそうな感じに見えてしまう」
Cyder「『意味がなさそうな感じ』。そのニュアンスはわかりますね」(*)
afro108「でも、そんなこと言ってんのオジさんだけと思うで
MOMENT「いや、物語好き、映画好きなんですよ笑」
afro108「そうそう!笑 やっぱり、物語好きやん、日本人って」
Cyder「そうっすね。物語はやっぱり大事ですよね。前フリがしっかりあったほうが、最終的に到達するカタルシスは大きい。でも、今は多数派にはなり得ないのかもしれませんね」
afro108「そうなんだよね。金稼ごうとすると、『アルバム』ってそんな意味ないかもね」
Cyder「作り手としても『そんなんわかってくれるのかな?』っていう猜疑心もあるだろうし。『シングルっぽいキャッチーな曲いっぱい入れといたほうが良いんじゃないか』当然そう思うだろうしね」
afro108「そこは、プライドのせめぎ合いなんやろうね」
Cyder「というのを、MOMENTの話を聞いてて思ったなあ」
afro108「なるほどね」
Cyder「その一方で、何年も経った後聴くアルバムって、『良いシングルがいっぱい入ってるアルバム』だったりするような気も...どうすか?」
afro108「『良いアルバム』に関しては、タイミングとかさ、年齢もあるんちゃう?19歳の時に聴いてたものを、今聞いても、もうマインドが違うやん。もう俺らも学生マインドじゃないし。その時々で、聴く気持ちが違うから。だから、俺はそもそも過去のアルバムをめっちゃ聴いたりとかはないかな。それか、超過去。KICK THE CAN CREWとか、RHYMESTER初期とか。この間、R25で、超過去の曲を聴いて、それらに紐付いた色んなことを思い出して、泣きそうになった笑
Cyder「『良いアルバム』の条件としては、あとは『尺』ですね」
afro108「尺ね」
Cyder「RHYMESTERで言うと、『POP LIFE』が構成として凄いと思ってて。一枚かけて「物語」をやると、どうしても冗長になってしまいがちなんだけど、短く、ちゃんとカタルシスをグッと生んでて」
afro108「アルバムの尺ね。50分ぐらいの流行ってるよね、今。昔みたいな、70分ぐらいのアルバム、あんまないよね。『CD-Rにギリギリ焼ける』みたいな」
Cyder「そういう意味で、MOMENTのSeasonシリーズは、結構短いのが良い。FREE DLをする側は、そんなに力を入れて聴くモードで来てないから。短い方がリスナーフレンドリーかな、という気はしますけどね」

(*)Cyder後記:若干DJ SOULJAHのアルバムを悪く言ってしまったんですが、後から考えてみると、「物語」に偏重すると、アルバムにおいて「語り部」たり得ない「DJが出すアルバム」の意味ってなんだ?っていう話にもなるな、と。そこで出るひとつの確からしい答えは、「そのDJにしか出来ない掛け合わせの妙」だと思うわけで。そういう意味で、氏のアルバムでは、SALUとJinmenusagiをぶつけたりしてるし、「DJが出すアルバム」の要求には十二分に応えているのかもしれません。


How to promote?

afro108「まぁ、色々出てましたね、今年も」
Cyder「ニュースターって言う意味だと、結局KOHHしかいなかったのかな、と」
afro108「あと、Jinmenusagiとかもね」
Cyder「Jinmenusagiはニュースターに入れると怒られそうだけど笑」
MOMENT「Jinmenusagi君は、もっと知られて欲しかったかな」
afro108「俺は知らんかったから、本当に不勉強で申し訳ないな、と思ったわ」
Cyder「彼に関しては、もっとプロモーションにお金をかけないと勿体無い。『業放草』も、PVらしいPVあるのかな?みたいな」
afro108「yanatakeさんはめっちゃ推してたけどね」
MOMENT「ちょっと前に、『やれ』でPV出てましたよ」
Cyder「そうなの?知らんかった笑」
MOMENT「これからどうなるかは、わかりませんけど、インディーのああいう状況の中で、作品が良くてもプロモーションには限界があるんだな、と思いましたね。メディアの役割を果たす人がどんだけプッシュしてくれても、もっと広い層には行けない」
Cyder「『事前に』PVとかで期待値を煽って、初めて成立する、時代を代表するクラシックっていうのもありますからね。AKLOの『The Package』とか」

afro108「種まきをしてね」
Cyder「待ち望まれるように...笑 そういう意味で、ANARCHYの『NEW YANKEE』があんまり年間ベストに入ってないのはちょっと残念。種のまき方はほぼ完璧だったのに、誰しもが推す今年の1枚にはなれなかった」

afro108「良かったやん、俺結構好きやで」
Cyder「でも、ベストに入ってないんですよ」
afro108「いや、俺らが良いって言わなくても、俺らみたいなこういうややこしい人らに好かれるより、EXILEと並行でANARCHY聴く人の方がよっぽど大切なんだって
Cyder「そんな人いますかね?」
afro108「そういう人が増えればいいな、っていう」
Cyder「そうっすね...」
afro108「でも、自分でセルフプロモーションするのも限界あるよね。ちょっと、こっ恥ずかしいしね。自作自演感あるやん」
Cyder「Ken The 390ぐらい頭がキレたら別ですけどね」



Korean Hiphop Scean

afro108「そういう現状と、韓国のシーンを比べると、色々考えるよね。韓国では、イケイケどんどんのラッパーが一番売れてる。AKLOが一番売れてるみたいな」
MOMENT「そうですね。DOK2とか」

afro108「そうそう。だって、Diploとやったり、Skrillexとやってる奴もいたり。勿論PSYとかもいる」
MOMENT「いや、日本が一番いいです」
afro108「向こうにもなんか問題あるの?」
MOMENT「いや、政治的立場上こういう 笑
afro108「笑 でも、韓国はパイが大きいやん」
MOMENT「パイはそこまで変わらないと思いますけど。韓国は、K-Popと繋がってるから大きく見えるんじゃないですか」
Cyder「ラッパーにも水が流れるようになってるわけだ」
afro108「なるほどね。でも、韓国のシーンは、『アイドルがやばいラップする』、っていう、SKY-HI的なのを先にやってた感じが良かったのかもね。BIG BANGとかも、アルバム聴いたらギョッとするような曲やってる。でも、『アイドルとして』BIG BANGを好きな日本人も、LIVEではその曲でめっちゃ盛り上がる、みたいな。そういう風土もあるのに、AKLO的なものは現状ウケてない。もっとアイドルみたいな人が出てこないとダメなのかもね。ジャニーズ的な。まずは、ルックスからでもいいからさ」

Cyder「ルックスといえば、あれは、韓国ではカッコイイことになってるんですか?」
MOMENT「なってますね」
afro108「当然なってるよ。東京ドームとかでツアーやってんねんで?考えられへん」
Cyder「なるほど。でも、カッコイイことはカッコイイけど...、差をつけたのは、結局、広告代理店のレベルの違いかな、とも思うんですよね」
afro108「どうかな?笑」
Cyder「プロモーション力というか」
afro108「あと、韓国は売れてから置きに行かないよね。大体みんな置きに行くから」
Cyder「それが、日本の広告代理店のクソな所だと思うんですよ」
afro108「それはミュージシャンもそう。Hilcrhymeも、一回売れようと思ったら、あのやり方しかなかったわけで。俺はそれが悲しい」

Cyder「この前、Mステ見てたら、死にたくなって。4時間スペシャルやってたんですけど、高校の頃見てた面子と、変わってないんですよ。それって、結局『テレビスター』ってテレビが育てないと育つわけない、って話で。事務所が金持ってるアイドルとかばっかり出てて『CDが売れません』『スターがいない』って。そりゃそうだよ、っていう。Blastかったり、ロキノン買ったりする高校生って、所詮少数派じゃないですか。ジリ貧な感が凄かった。テレビ局が、もっとミュージシャンをフックアップしてくれないと、っていう。」



Japanese Hiphop's Future

afro108「確かに、お先真っ暗な感はあるよね、音楽だけじゃないけど」
MOMENT「最近、『悟り世代』という言葉を聞いて。『ゆとり』から、更に『悟り』。『もう日本に居られないかも...』って思って笑 『悟り』もいいけど、KOHHみたいな人はもっと出てきてほしいですよねー」

Cyder「具体的はどういう?」
MOMENT「全然日本っぽくないじゃないですか。根本的に、僕と遠い世界の人だし、怖い人だし。日本の常識に囚われてないっていうか」
Cyder「いっぱい刺青入ってるもんね...」
MOMENT「ちゃんと学校通ってて、『普通』と言われるような、社会化された人達からは出てこない言葉や考え方がある、っていう」
afro108「ヒップホップって、そもそもそういう音楽だしね」
Cyder「Jinmenusagiとかも、絶対に学校とかでうまくやるタイプじゃない笑」
afro108「あとは、GOMESSとかさ。Eテレで特集されるわけだから」

Cyder「『ろくでなし』、って言ったらアレだけど、社会ではあんまり日の目を見ないような人たちの言葉にスポットライトが当たるからこそ、ヒップホップは感動的だという...」
afro108「『これしかないんだ感』がすごいよね。勢いが違うし」
Cyder「そういう意味では、狐火をずっと推してるんだけど、僕の周りではイマイチウケない」

afro108「リアルが過ぎるっていう笑」
MOMENT「最近は、今のアルバムをプロデュースしてくれてる人から『日本語のラップは聞かないほうが良い』って言われて、半年くらい聞いてない」
afro108「影響されて引っ張られるからね」
Cyder「今は、韓国3割、US7割くらい?」
MOMENT「US9割、日韓0.5ずつ笑」
afro108「2014のUSは誰が良かったん?」
MOMENT「BIG K.R.I.T.と、J.Coleくらいですねー」
afro108「J.Coleは良かったなー」
MOMENT「でも結局、この二人もヘッズ向けですからね。あと、日本語ラップでは、SALUのCOMEDYと、KOHHかな」
Cyder「選外だと、僕はAKLOのBreak the recordsのremixが良いと思って。リリックは同じで、デリバリーだけで新しく聴かせるよ、っていう」
afro108「AKLOは、アイドル化すればいいと思うんだよ」

Cyder「アイドルになれますかねー」
afro108「え?なれるんちゃう。顔いいし」
MOMENT「アイドルを狙うか、素を出すか、って意味だと、Hey Money RemixのAKLOのVerseは、素がわかって意外でしたね。30代以上じゃないと分かんないような内容でやってて笑」
afro108「一応年齢不詳になってるけどね
Cyder「AKLOは、まだ出してないキャラいっぱいあるから笑 LIVEのMCとかで、『あれ、この人本当は、ちょっと面白い人なんじゃないかな...?』っていう。ところどころホツレが見える」
afro108「若干の天然感がね笑」
MOMENT「僕は、SALUとKOHHに、期待してます」
afro108「SALU君には」
Cyder「頑張って欲しい?笑

MOMENT「いや、頑張らなくていい笑 その周りの人には、頑張って欲しいですけどね。あの二人は、僕からすると、日本の常識に囚われてないと思うんです。二人がどこから来たか、ルーツはそれぞれ違うんですけどね。常識に囚われていない一方で、この二人が、『普通の人と違う人』と更に違うのは、普通の人の感覚も持ってるっていう。J.Coleが今回良かったのもそういうところだと思うんですよね」
afro108「みんなと違うけど、みんなが思ってることを言う」
MOMENT「そう。『貧乏なんて気にしない』っていうのもそれでしょ?」
afro108「『結局見た目より中身』とかもね。DJ KAZZMAが今年あれを何回言ってたかわかんない笑
MOMENT「そういう意味で、僕とJinmenusagi君は、将来的にあんまり...笑 Jinmenusagi君には悪いけど」
afro108「でも、俺はJinmenusagiの方が好きかな。売れる人と、アートを突き詰める人と、両方いると思う」
Cyder「確かに、SALUには共感込みの、『悟り世代代表』感がありますもんね。『このクソな社会に適合してどうなる』とかも。これから2人がどうなっていくか、楽しみだね。」
afro108「そうっすねー」



宣伝

afro108「ということで、MOMENTのアルバムの発売日いつだっけ?」
MOMENT「1/21です!」
Cyder「ということで、みんな買ってあげてください


2015年1月21日発売。GROW UP UNDERGROUND RECORDS 2000円。

「韓国在住時から母国語ではない日本語でラップをしたいという情熱から日本に移住を決意したMOMENTの初のCD作品。」

01. Hold Your Breath
02. Confession
03. Korean Language 101
04. SH! B@L NOM (Modafucka)
05. Limbo (T.M.B.T.M.B)
06. Waiting
07. Luthien feat. C.Muligan
08. ILLEAGLE feat. Young Yazzy, IPPey(BYG Daddy)
09. SH! B@L NOM Remix* feat. Jinmenusagi, SNEEEZE
10. 京都少女*

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